乳幼児の急性中耳炎

乳幼児の急性中耳炎

乳幼児の急性中耳炎に対する鼓膜チューブによる治療について

保育園児の急性中耳炎は繰り返して治りにくく重症化しやすい

乳幼児、特に2歳以下の保育園児では、急性中耳炎を何度も繰り返すことがよくあります。なかなか治らず、重症化することもしばしばです。

薬が効きにくい病原菌によることが多く、専門学会から示されている治療の指標(ガイドライン)に従って治療をしても完治せずくすぶってしまい、 抗菌薬漬けのような状態になってしまいがちです。

抗菌薬を使いすぎると、病原菌が薬に対する抵抗力をつけてしまい、薬がどんどん効かなくなり(耐性化)、さらに強力な抗菌薬が必要となり、 それすら効かなくなってしまう、という悪循環に陥ってしまう場合もあります。

急性中耳炎は重症化すると髄膜炎や顔面神経麻痺を生じることもあり、しっかり治療する必要があるのですが、 それによって耐性化を生じてしまうと、のちに肺炎などを起こした際に大変なことになります。

鼓膜チューブ治療

抗菌薬漬けにさせないために

このような乳幼児の中耳炎に対して、抗菌薬以外に有効な治療法があることをご存知でしょうか。鼓膜(直径1センチ程度)に直径1ミリ程度の小さな穴をあけて、その穴にチューブを入れるという、ガイドラインにも記載されている治療法です。

チューブを入れると、鼓膜の奥の部屋(中耳)にたまっていた膿がどんどんチューブから出てきますが、 一旦膿が出きってしまうと、チューブから中耳に空気が取り入れられて、中耳の粘膜が病的な状態から正常に戻って中耳炎を生じにくくなり、 抗菌薬を使う頻度も激減します。すなわち中耳炎の治療だけでなく、中耳炎を起こしにくくするという予防効果も期待できるのです。 なお抗菌薬を中耳炎の予防目的で使用することはできません。

チューブを入れることにより、中耳炎からの発熱や、耳の痛みによる夜泣きもなく、多くの子どもたちが機嫌よく元気に過ごせるようになり、 お父さん、お母さん方が安心してお仕事に取り組むことができるようになります。

鼓膜チューブを入れる利点

薬剤アレルギーのために抗菌薬を使用できない場合、抗菌薬の内服をどうしても嫌がる場合、抗菌薬によりひどい下痢を生じてしまう場合、熱性けいれんがあり極力発熱を避けたい場合、心臓手術後の乳幼児など体の中に中耳炎などの感染巣が存在するという状態を極力避けたい場合にも、鼓膜チューブは非常に有効な治療手段となります。

また鼓膜チューブが入っていると、抗菌薬を点耳という方法で直接中耳に入れることが可能となり、抗菌薬を内服する場合と比べて耐性化をそれほど心配することなく抗菌薬を使用することができます。

乳幼児期は耳の発達にとって非常に大切な時期で、この頃には鼻の奥から耳管という管を通って中耳に空気がとり入れられて、 中耳がどんどん発達して行くはずなのですが、中耳炎を繰り返すと中耳の発達が妨げられることもあります。 鼓膜チューブを入れることにより、中耳の発達が通常通りうながされることも期待できます。

鼓膜チューブを入れる方法

乳幼児の鼓膜にチューブを入れることは、もちろん簡単ではありません。病院でそのような治療を希望すると 「入院して全身麻酔をかけて手術室でしないと無理です」と言われるでしょう。また多くのクリニックでも技術的に困難でしょう。

当院では通常の外来処置の一環として行っており、特に予約等も必要ありません。院長は大学病院時代に数多くの難しい耳の手術を執刀し、 そこで得た技術を日々の診療に生かせるようトレーニングを積んでおりますので、このような難しい処置も可能なのです。

ただし耳の穴が非常に細い場合や、すごく力が強くて頭の動きが激しい場合は 「すみません、頑張りましたができませんでした」ということになる可能性もありますが、そのようなことはまれです。

なお麻酔については鼓膜に麻酔液を浸した綿をしばらく置いて、しっかり痛みをとった上で処置を行いますのでご安心下さい。

鼓膜チューブの治療例

重症な急性中耳炎を何度も繰り返し、他院で強力な抗菌薬を使用されても治らないとのことで当院を受診し、 鼓膜チューブによる治療を行った保育園児の例。

鼓膜チューブの治療例
炎症により真っ赤に腫れ上がり、膿があふれ出そうになっている左鼓膜。
鼓膜チューブの治療例
鼓膜を切開して膿を出し、鼓膜チューブを挿入。
鼓膜チューブの治療例
術後2週間目の鼓膜所見。
炎症はすっかり落ち着き、鼓膜チューブが入っていること以外は正常となった。

小児科の先生からの紹介も多数

保育園児の急性中耳炎は耳鼻咽喉科でも小児科でも治療されていますが、治療に頭を悩ますことは、われわれ耳鼻咽喉科医も小児科の先生方も同じです。 小児科の先生方は肺炎など重症な呼吸器感染症を診る機会も多く、抗菌薬の耐性化については耳鼻咽喉科医以上に敏感です。

抗菌薬を上手に使用しても治らないとのことで小児科から当院に紹介され、鼓膜チューブを入れて、 その後ほとんど抗菌薬も使用せずに、元気に保育園に通えるようになったというお子さんが多数おられます。

大病院の小児科からの紹介例や、ドクター夫妻のお子さんで鼓膜チューブによる治療を希望されて当院を受診される例も多数あります。

鼓膜チューブによる治療をご存知ない小児科の先生もおられますので、 中耳炎の治療について不安を感じておられるお父さん、お母さん方は、一度当院でご相談いただければ幸いです。

国を挙げて耐性菌拡大防止に取り組みはじめました

薬剤耐性菌の拡大を防ぐため、2016年4月、政府は初の行動計画を公表しました。

抗菌薬の使用量を2020年度に現在の3分の2へと減らすことや、乳幼児の急性中耳炎の主な原因菌でもある肺炎球菌のペニシリン(抗菌薬の一種)耐性率48%を15%以下にする、という数値目標を盛り込み、今後抗菌薬の乱用防止のためのガイドライン策定も検討されるようです。この行動計画は主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも各国に対して公表されます。

現在、新規抗菌薬の開発は期待できない状況にあり、今ある抗菌薬の効果をいかにして長続きさせるか、ということが極めて重要な課題となっています。個人的には、数年前に急性中耳炎の切り札として売り出された抗菌薬も、当初ほどの切れ味がなくなってきているという印象を持っています。抗菌薬を使用せずに急性中耳炎などの感染症を制御できる方法があるのなら、それを積極的に選択すべき時代が来ている、ということでしょう。

急性中耳炎の切り札として使用されている抗菌薬が、これからも切り札として効果を発揮し続けるために、そして未来のこどもたちが耐性菌に苦しめられないために、今後を見据えて急性中耳炎の治療に取り組んで行くことが必要とされているのです。

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